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​赤線

写真の特性の中で自分が一番惹かれる点は「記録性」だ。
カメラのレンズの冷徹な視線はいつも人の想像を超えたものまで写しとってしまう。
江戸時代、遊女が身に着ける衣装や髪型は、最先端のファッションとして一般市民に受け入れられた。また、恋街の人間模様は歌舞伎など芸能のインスピレーションの素となり、この頃全盛期だった吉原は、最新文化の発信地でもあった。
江戸幕府公認のもと作られたこの赤線地帯は、今現在も存在しているものの、新規の出店は法律
により制限されている。
この先、店の数が増えることは考えにくく、おそらく徐々に減少していくだろう。
現存しているこれらの建物は今から30~40年前のもので、劣化、老朽化が激しい。
建物の外見、部屋の様子、使用される器具や調度品は、江戸時代から脈々と続く独特の美意識が貫かれているようにも感じる……が、正直なところそれが事実かどうかは、これらの写真だけでは分からない。
この写真の被写体や、意図せず写ってしまった細部が50年後100年後の人たちの歴史研究資料の一部になれば良いと思う。

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