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Chaito! Cuba, Havana

日没少し前、急なスコールをビルの軒先でやり過ごしていたら、隣のアパートの奥から音楽が聞こえてきた。
その音の響きにつられ、半分しまった薄暗いシャッターの前で耳をそばだてていると、おじいさんに呼び止められた。
「孫のバンドがガレージで練習中なんだよ、見ていく?」
僕はもちろん「見たい、聴きたい!」と答え、中へと案内された。
キューバにやってきたのは、ラテン音楽が好きだったのと、アメリカと至近距離にありながら資本主義的文化が全く無いという国に興味があったからだ。
練習していたのは、10人編成で大所帯の若いバンド。音は、伝統的なサルサにHIPHOPを足したような、日本では生まれえないようなものだった。
バンドリーダーと片言の英語で話してみると、「本当はエミネムが一番好きなんだ」「日本のマンガ・アニメ大好き」と、日本から丸1日かけてたどりついた社会主義国で聞くには、本当に意外な言葉ばかりだった。
アメリカとの国交が回復したら、20世紀の国家のノスタルジーがそのまま残るこの国が、ありふれた風景へと変わってしまう、なんて僕ら一介の旅行者は勝手なことを思うけれど、現地で生きる人たちの心情は僕達には知る由もない。

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